
こんにちは。
カケコム弁護士採用の事業責任者をしております、一ノ瀬と申します。
弁護士採用の解像度を上げるため、私は現在、毎週 2〜10 名ほどのロースクール生と面談を行っています。
そこで強く感じるのは、制度変更や就活スケジュールの早期化で「立ち止まって考える時間」が取りづらくなり、自己分析の重要性がこれまで以上に高まっているということです。
知識のインプットや試験対策に追われるあまり、
「自分は何がしたいのか」
「どんな弁護士になりたいのか」
「どの環境であれば力を発揮できるのか」
といった“キャリアの土台”を見つめる余裕がない学生が、私の体感ではとても多い印象です。
この記事では、そうした現場での実感や、私自身の経験も踏まえて、皆さんが最初の一歩を踏み出しやすくなるようにまとめています。

2023年から司法試験の 「在学中受験」 が認められたことで、法曹を目指す学生の進路は大きく変わりました。
「受験機会が広がった」「早く法曹としての職につける」という良い面がある一方で、多くのロースクールでは 必要単位を早期に揃えるためのカリキュラム前倒し が進み、学習負荷はこれまで以上に増えています。
必修科目を早期に履修しながら司法試験レベルの学習を進める必要が出てきたことで、
授業理解の難度が上がる
アウトプット学習の開始時期が早まる
試験対策・ローの授業・日常生活の両立が困難になる
など、学生が抱える負担は重くなりました。
さらに採用の現場では、企業法務大手を中心に LS2年(既修1年目・未修2年目)から選考が集中する動きが強まっています。
ℹ️ 志望先別採用スケジュールについて、記事にまとめているので、こちらを参照ください。
その結果、「そもそも自分がどんな弁護士になりたいのか」「どういう働き方をしたいのか」を立き止まって考える時間が、取りづらくなっていると感じています。
本来、"自己分析"は ESや面接の準備にも直結する大切なプロセスですが、
それだけにとどまらない 「自分のキャリア選択の土台をつくる作業」 でもあります。
自分が何者で、何を大切にして、どんな法曹になりたいのか ―― それを言語化する“就活の第一歩”です。
これは私自身の経験からも強く感じています。
私は学歴が特別高かったわけではありませんが、就活を始めて3ヶ月で、当時の東証一部上場企業を含む5社から内定をいただきました。
きっかけは、ESに書いた 「高校2年でM-1の1回戦突破/お笑いインターハイ西日本1位」 という経験でしたが、そのエピソードが“自分を表す出来事”だと気づけたのは、大学の就職部の方と面談し、初めて 自己分析 に向き合った時でした。
それまでは、「そんなことが武器になる」とさえ思っていませんでしたし、どんな環境で力を発揮できるかも見えていませんでした。
こうした状況の中で、
では実際に「自己分析」とは何を指すのか、どう進めればいいのか?
その“中身”を明確にすることが、これまで以上に重要になっています。
ℹ️ 自己分析と同様に業界・事務所研究も重要です。
法律事務所にはどういう取扱分野があるのか?以下の記事を参照ください。
法律事務所の取扱分野一覧|司法試験との対応で分かる実務ガイド
そこでまずは、自己分析の本質をシンプルに整理してみます。
私が考える自己分析の目的は、次の 3つ です。
1.「自分は何者か」を自分で理解すること
どんな価値観・興味・働き方を大切にしたいのか
どんな法律事務所で、どんな弁護士として生きていきたいのか
2.その理解をもとに「自分に合う事務所」と出会うこと
ミスマッチを減らし、入所後も自分らしく働ける環境を選ぶ
仕事・環境・人間関係の“ズレ”を最小限にする
3.その結果として、ESや面接で“使える自己PR”が自然に整うこと
強み・経験が一貫して語れるようになり、説得力が増す
「盛った自分」ではなく、軸に基づいた自分の言葉で話せる
⚠️ 重要なのは、1 と 2 ができて初めて 3 が本当の意味で成立するという点です。
逆に言えば、土台が定まっていない状態では、いくらESや面接対策をしても“どこか無理が出る”のが就活の難しさでもあります。
自己分析をきちんとしておくと、
「無理して盛った自分」を演じなくてよくなる
入所後に「思っていたのと違った」というギャップを減らせる
自分の魅力を減衰させず、素直に伝えられる
結果として、事務所にも自分にもハッピーなマッチングに近づいていきます。
この記事では、
僕(一ノ瀬)が一番おすすめしている「強みリスト×エピソード」で始める自己分析
もう少し腰を据えてやりたい人向けの、いくつかのやり方
自己分析の結果を、志望動機・自己PRに落とし込む考え方
をまとめていきます。
私がロースクール生と面談をしていて感じるのは、
最初から完璧な「自分探し」をしようとすると、ほぼ全員つまずく
ということです。
なので、最初の一歩としては、
「自分の強みだと思うもの」と「それを裏付けるエピソード」を紐づける
ところから始めるのが、一番シンプルで、しかも実務的に使えます。
ここでは、カケコムが弁護士就活向けに作った「あなたの強みリスト」を使います。
まずは、以下のリストのうち、
「これは自分に当てはまりそうだ」と思うものに、遠慮なくチェックを入れてください。
ℹ️ 以下のリストをpdfでダウンロードする場合は、こちらから

ポイントは、「ちょっと当てはまるかも」くらいでも一旦チェックして良いことです。
この段階では、盛ってもOK。後でちゃんと精査します。
次に、チェックをつけた項目ごとに、
具体的なエピソードがパッと思い浮かぶもの
エピソードが出てこないもの
に分けます。
ここでいう「エピソード」は、
いつ頃の話か
どんな状況だったか
自分は何をしたか
その結果どうなったか(できれば数字・評価・周囲の反応 など)
が、ある程度具体的に言えるものです。
■ エピソードがある強み
→ そのまま自己PR候補になります。
■ エピソードがない強み
→ 「なんとなくそう思っているだけ」「他の人と比較していない」など、
思い込みの可能性もあるので要注意です。
いわゆる「ジョハリの窓」でいうと、
自分も他人も認識している強み
自分はそう思っているが、他人からはそう見えていない可能性のある部分
を切り分けていくイメージに近いです。

point💡
就活においては、[①解放の窓]をできるだけ広げていくことが重要だと考えられています。
エピソードがある強みについては、少しだけ「弁護士就活仕様」に調整します。
意識したいのは、以下の3点です。
定量的な情報を入れる
- 人数(◯人のチーム・◯名の後輩)
- 期間(◯年間・◯ヶ月)
- 結果(◯%改善・◯件達成 など)
第三者の視点を入れる
- 教員・上司・先輩からのコメント
- 任せてもらえた役割
- 表彰・選抜など
「弁護士の仕事とどうつながるか」を一言だけ添える
- 一般民事なら「不安の強い依頼者に寄り添う力」
- 企業法務なら「継続的に企業を支える継続力・実行力」
- 刑事なら「プレッシャー下で冷静に判断する経験」 など
ここまで整理できると、
ESの自己PR欄にも、面接の「ガクチカ」「強み」トークにも、そのまま使える素材ができます。
もし余裕があれば、
ゼミの友人
バイト先の同僚や店長
ロースクールの友人や先輩
に、「自分ってどんなところが強みだと思う?」と聞いてみてください。
このとき、
「長所って何だと思う?」よりも
「自分がいて良かったと思った場面があったら教えてほしい」
と聞いた方が、具体的なエピソードベースのフィードバックをもらいやすいです。
「強みリスト×エピソード」だけでも、
就活に“使える自己分析”としては十分機能します。
ただ、自分のキャリアの軸をもう少し深掘りしたい場合は、
以下のようなやり方も組み合わせると、輪郭がよりクリアになります。
高校・大学・ロースクール・司法試験勉強の期間などをざっくり区切って、
その時期に何をしていたか
モチベーションが高かった出来事/低かった出来事
を、時系列で並べてみます。
これは一般に 「モチベーショングラフ」 と呼ばれる手法で、
自分の興味関心の変遷を“見える化”するのに非常に役立ちます。
そこから、
どんなときにやる気が出やすいのか
どんな環境だとしんどくなりやすいのか
が見えてくると、自分に合う事務所の雰囲気が少しずつ言語化されていきます。
<以下モチベーショングラフの雛形>

サークル、部活、ゼミ、アルバイト、受験勉強など、
自分が「これは頑張ったな」と感じるテーマを1つ選びます。
その上で、
なぜそれを始めたのか
なぜそこで頑張れたのか
なぜ続けようと思えたのか
なぜそのやり方を選んだのか
と、「なぜ?」を何度か重ねていくと、
自分が大事にしている価値観や行動パターンが浮かび上がってきます。
弁護士就活だと、「Must(企業から求められること)」を一律に書くよりも、
Will:自分が将来やりたいこと・関わりたい分野
Can:今の自分が提供できる価値(=強みリスト)
Value:仕事を選ぶうえでゆずれない価値観(働き方・人・成長環境など)
という整理の方がフィットします。
「Can × Value」が今の就活の軸になり、
そこに少しずつWill(将来像)をかぶせていくイメージです。
紙やPCで、「関心がある法分野・業界・働き方」をマップ状に書き出してみるのも有効です。
一般民事(離婚・相続・交通事故…)
企業法務(M&A、スタートアップ、IT、労務…)
刑事、少年事件
公益的な業務 など
クラークや説明会に参加する前に、
「どこに足を運ぶと自分の軸が磨かれそうか」を考える材料になります。
法律事務所の取扱法務分野一覧
自己分析は、自分だけでやるとどうしても偏ります。
ロースクールの先生
面談やイベントで出会った弁護士
就活仲間
から、「あなたから見て、自分はどんなタイプの弁護士が向いていそうか?」と聞いてみると、
意外なヒントが返ってくることも多いです。
ここまでで整理した内容を、
選考で使う“アウトプットの形”に変えていきます。
自己PRは、次の3点が一文ずつそろえば十分です。
自分の強み(例:共感力、タスク管理力 など)
それが発揮された具体的なエピソード
弁護士としてどう生かしたいか
ここで最初の「強みリスト×エピソード」が、そのまま効いてきます。
志望動機づくりで意識したいのは、
自分の「仕事選びの軸」
(例:中長期でクライアントに伴走したい/専門性を深めたい/人の人生に近い分野で働きたい など)
その事務所の特徴・スタイル
(例:中小企業の顧問が多い/ベンチャー中心/個人事件の比率が高い など)
1と2の重なりがどこにあるか
この「重なり」を言語化できると、
「なぜ数ある事務所の中で、あえてここなのか」
が、自然に伝わる志望動機になります。
自己分析というと、
「就活のために仕方なくやるもの」
「ESのネタ出しのための作業」
というイメージを持たれがちです。
でも、本質的には、
自分とは何者かを理解し、自分に合う環境を選ぶための作業
だと考えています。
その結果として、
ESや面接で、嘘のない、自分らしい言葉で話せる
入所後も、自分の価値観と大きくズレない環境で働ける
事務所側も、「この人に来てほしい」と思える人と出会える
という、両者にとってハッピーな就活に近づいていきます。
まずは難しく考えすぎず、
この記事で紹介した「強みリスト×エピソード」から始めてもらえたら嬉しいです。
そこから先は、一緒にアップデートしていきましょう。
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