
ロースクール生・司法試験合格者が就職活動をする中で、
最も分かりにくいものの一つが 「法律事務所の取扱分野の違い」です。
「企業法務」「一般民事」「家事事件」などの言葉はよく見かけますが、
実際に何をするのか
どんな能力が求められるのか
自分が勉強してきた科目とどうつながるのか
が分からないまま、イメージだけで事務所を選んでしまうケースも少なくありません。
この記事では、司法試験の科目(とくに選択科目)と、実際の法律事務所の業務構造を結びつけることを目的に、カケコム弁護士採用で採用している分野分類をもとに、各分野の特徴を解説します。
まずは、法律事務所の分野構造を大きく整理します。
(コーポレート/M&A/ファイナンス/スタートアップ/顧問/企業訴訟/規制・業法/国際法務/労働〈企業側〉/企業倒産・再生/知的財産)
(交通事故/債務整理/労働〈労働者側〉/不動産/インターネット/消費者)
(離婚/相続/後見)
※「企業倒産・再生」「知的財産」は、
実務上は 企業法務と密接に連動する専門分野として扱われることが多いため、
本記事では企業法務系分野の一部として位置づけています。

― 会社を「仕組み」で支える法務 ―
対応する司法試験科目
会社法
商法
民法(契約)
会社設立、株主総会・取締役会の運営、商業登記、株式発行、ガバナンス設計など、企業活動の「土台」を作る法務です。
契約書レビューや社内規程の整備など、企業の日常業務に最も近く、「企業法務の入口」となる領域です。
対応する司法試験科目
会社法
民法
商法
企業の買収・売却・合併を扱う分野。
デューデリジェンス、契約書作成、条件交渉、クロージングまで一貫して関与します。
条文知識だけでなく、
数字への耐性
ビジネス理解
交渉力
が強く求められ、スケールの大きい案件に関わりたい人向けの領域です。
対応する司法試験科目
会社法
商法
【選択科目】経済法(独禁法・競争法)
銀行融資、社債発行、投資契約、ストックオプションなど、企業の資金調達を法務面から支える分野です。
金融機関・投資家との交渉が多く、数字と契約が密接に結びつく実務が特徴です。
対応する司法試験科目
会社法
民法
【選択科目】知的財産法
ベンチャー企業の立ち上げから成長までを支援する法務。
投資契約、ガバナンス設計、利用規約、業法チェックなど幅広く扱います。
スピード感があり、「完璧な正解」より「実務としての最適解」を出す力が求められます。
対応する司法試験科目
民法
会社法
【選択科目】労働法
企業の“かかりつけ弁護士”として、契約書、労務、クレーム対応、債権回収など日常的な相談を幅広く扱います。
分野横断的な実務経験を積みやすく、企業と長期的に関係を築く働き方が特徴です。
対応する司法試験科目
民事訴訟法
民法
会社法
企業が当事者となる紛争を扱います。
主張整理・証拠分析・訴訟戦略など、法的思考力を最も深く使う分野の一つです。
対応する司法試験科目
行政法
【選択科目】経済法
【選択科目】環境法(サステナビリティ・ESG)
金融、医療、薬機、不動産、通信など、業界ごとのルール(許認可・行政対応)を扱う法務です。
「どの業界に強いか」がそのまま専門性になります。
対応する司法試験科目
民法
商法
【選択科目】国際関係法(私法)
【選択科目】国際関係法(公法系)
海外企業との取引、英文契約、クロスボーダーM&Aなどを扱います。
語学力だけでなく、文化・商慣習の違いを理解する力が求められます。
対応する司法試験科目
民事訴訟法
【選択科目】労働法
就業規則整備、ハラスメント調査、労働審判・訴訟対応など、「人」に関する企業法務です。
コーポレートやM&Aとは性質が大きく異なるため、カケコムでは企業法務の中でも独立した重要分野として扱っています。
対応する司法試験科目
【選択科目】倒産法
破産、民事再生、私的整理などを扱う高度専門分野。
企業法務とは横並びの独立領域として扱われることが多いです。
対応する司法試験科目
【選択科目】知的財産法
特許・商標・著作権を扱います。
多くの事務所ではIP部門として独立しています。
― 個人の生活に最も近い法務 ―
対応する司法試験科目
民法
民事訴訟法
損害賠償、後遺障害認定、保険会社対応など。
依頼者の生活再建に直結し、感謝を実感しやすい分野です。
対応する司法試験科目
民法
【選択科目】倒産法
任意整理、個人再生、自己破産を通じて生活再建を支援します。
定型性と個別判断のバランスが特徴です。
対応する司法試験科目
民事訴訟法
【選択科目】労働法
残業代請求、不当解雇、ハラスメントなど、労働者の権利を守る分野です。
対応する司法試験科目
民法
賃貸トラブル、売買、立退きなど。
事実整理と交渉力が重要です。
対応する司法試験科目
民法
民事訴訟法
※実務では情報通信・プロバイダ責任制限法などの知識が必要
誹謗中傷、投稿者特定、発信者情報開示など。
スピード感があり、若手弁護士に人気の分野です。
対応する司法試験科目
民法
※実務では特定商取引法・消費者契約法等を扱う
詐欺商法、サブスクトラブルなど、生活に密着したトラブルを扱います。
― 人生に深く関わる法務 ―
対応する司法試験科目
民法(親族・相続)
法律だけでなく、感情・人間関係への配慮が強く求められる分野です。
対応する司法試験科目
刑法
刑事訴訟法
逮捕・取調べ・公判対応など、人の自由に直結する弁護活動を行います。
企業内法務として働くキャリア。
事業部と近い距離で、経営に深く関与する働き方です。
このカテゴリ分けは、
学生の誤解やミスマッチを防ぐことを目的に、
全国の法律事務所の実務構造を参考に設計したものです。
「企業法務=何でも」にならない
選択科目と実務のつながりが見える
事務所の強みを正確に伝えられる
あくまで“標準モデル”ではありますが、
進路選択の地図として使えることを重視しています。
他にも多数の記事があります。ぜひ一覧ページからお探しください。