
こんにちは。
カケコム弁護士採用の事業責任者をしております、一ノ瀬と申します。
弁護士採用の解像度を上げるため、私は現在、毎週 2〜10 名ほどのロースクール生と面談を行っています。
全国の学生と話す中で、「今の就活市場がどう動いているのか?」という輪郭が少しずつ立体的に見えてきました。
さらに、2023年からロースクール在学中に司法試験を受験できるようになった制度変更も採用市場に大きな影響を与えており、特に企業法務を中心に、これまで以上に“前倒し化”が進んでいる印象です。
LS2年とLS3年の境目が曖昧になり、早期選考の比重が従来より高まっています。
なお、本記事で記載しているスケジュール(月の表記)は、わかりやすさのため「2025年度モデル」をベースに記載しています。
今回は、その中でも問い合わせの多い
志望先別の就活スケジュール を整理してお伝えします。
なお、本記事で扱う数字は、
司法試験合格者をおおむね1500名前後としたときの“ボリューム感”を示す目安値 です。
またここでまとめている内容は、いわゆる統計データではなく、私が現場で学生や事務所とお話しする中で見えてきた リアルな空気感 に基づいています。
主観が混ざる部分や、数字が厳密でないところもあるかと思いますが、その点はご理解いただけると嬉しいです。

実はロースクールの学年呼称は、全国で異なります。
この記事ではわかりやすいように、学生との面談で一般的に使っている次の定義で統一します。
・未修1年 → LS1年
・未修2年 + 既修1年 → LS2年
・未修3年 + 既修2年 → LS3年
以下の内容もこの表記で記載します。

【企業法務全体のおおよその規模:300〜450名程度】
企業法務の中でも最も動きが早い層です。
5大事務所をはじめ、準大手・中堅の多くがこの「前期」に分類されます。
中心となる選考は次の2つです。
・サマークラーク(主に LS2年の8〜9月)
・ウィンター/スプリングクラーク(12〜3月)※事務所により呼称は異なる
(ウィンターとスプリングを厳密に使い分ける事務所もありますが、全体的には曖昧なため本記事ではひと括りにしています。)
・4月〜5月:サマクラ応募
・6月〜7月:ES選考
・8月〜9月:サマクラ実施
・9月〜10月:早期内定
・11月〜1月:追加枠が少し動く
企業法務の前期は LS2年が主役のマーケット です。
・存在はするが数が少ない
・採用枠の大半は LS2年夏で固まる
・LS3年向けは“追加募集”の性質が強い
また、サマークラークの動きはロースクールの所在地によっても大きく異なるケースがあります。
この地域差については、別途【地域別採用スケジュール】としてまとめた記事を公開する予定ですので、楽しみにしておいてください。
【企業法務全体(300〜450名)の“残りの枠”として動く領域】
企業法務の世界は「前期(サマー〜スプリング)」が主流です。
ただし、
・中堅〜準大手の一部
・司法試験後から本格稼働する企業法務系事務所
といった“後期型で動くゾーン”も確実に存在します。
・7月:司法試験終了
・8月〜翌2月:説明会・見学会・個別面談
・11〜翌3月:内定のピーク
「前期に乗り切れなかった企業法務志望層」が流れてくる領域でもあります。
【一般民事・刑事全体のおおよその規模:300〜450名程度】
一般民事の中で最も“標準的”な採用時期です。
流れとしては企業法務後期と近いものの、
市場構造も志望者層も異なるため
「一般民事のスタンダード」として捉えるのが正確です。
8月〜翌2月:説明会・見学会・選考
11月〜翌3月:内定が出やすい時期
なお、求人や説明会の募集は、司法試験後に動き出す層と、合格発表後に一気に増える層の二つに分かれる傾向があります。
【一般民事・刑事全体(300〜450名)の中でも“実務重視型”に該当する層】
一般民事の中には、
早期に一括で囲い込む形ではなく、
実務での関わり方・相性 を重視する事務所が一定数あります。
こうした事務所では、“後期採用”という制度的なものではなく、修習中の自然な接点から採用につながる ケースが多いのが特徴です。
・修習前(12〜3月):前期で埋まらなかった枠が細く残ることがある
・修習中:現場での働きぶりや人柄から声がかかるケースが一定数存在
一般民事の中でも “時間軸が後ろ寄りになる自然な構造” を持ちます。
【年次差が大きく、規模の推定は困難だが年々増加傾向】
・通年募集
・企業予算で急増・急減
・合格後の秋〜冬に増える年もある
・新卒枠/即戦力枠が混在
「典型スケジュール」が存在しない領域です。
【おおよそ 200〜250名程度(企業法務・一般民事へ分散)】
予備試験組は、論文合格発表を起点に一斉に動き出す のが最大の特徴です。
予備試験の正確なスケジュール(2025年度モデル)は以下のとおりです:
・5月:短答試験
・7月:短答合格発表
・9月:論文試験
・12月:論文合格発表
・翌1月:口述試験
・翌2月:最終合格発表
そして、口述試験の合格率は 毎年97〜99%(直近98.7%) と極めて高いため、「論文に受かれば、ほぼ最終合格」 と言われています。
そのため、予備組の就活は 12月の論文発表後から一気に加速 します。
① ウィンタークラークに参加するパターン
(論文発表後〜1〜3月の短期クラークに応募)
② 説明会 → 面談 → そのまま選考に進むパターン
(12〜2月は面談〜選考が一気に増える)
司法試験合格者(例年おおむね1500名前後)のうち、企業法務・一般民事・予備試験組として法律事務所に進む層以外にも、一定数が 別のキャリアパス を選択します。
具体的には、
・裁判官(任官)
・検察官(任検)
・官公庁・裁判所(裁判所調査官など)
・大学院進学・留学といったさらなる学習継続
・その他の法律関連職・企業勤務
といった多様な進路が含まれており、全合格者の進路は法律事務所だけではなく、複数の選択肢に分散している という構造が前提にあります。
・企業法務(前期+後期):全体で おおよそ300〜450名規模
※前期(LS2年夏)が主戦場。後期は司法試験後〜春にかけて動く層。
・一般民事・刑事(前期+後期):全体で おおよそ300〜450名規模
※前期が主流で、後期は修習中の実務から採用につながるケースが多い。
・予備試験ルート:200〜250名程度 が企業法務・一般民事のいずれかへ分散
※論文発表(12月)を起点に一斉に動くのが特徴。
・インハウス・官公庁・任官任検など:法律事務所以外へ進む層も一定数存在
※全体としては、司法試験合格者1500名前後が上記の複数の進路へ分散する構造。
法律事務所の採用動向は、制度改正や在学受験の解禁、事務所ごとの方針変更など、年々変化の幅が大きくなっています。
学生から見ても、事務所側から見ても「何が標準なのか」が掴みにくく、正しい情報にアクセスすること自体が簡単ではありません。
私たちは、こうした移り変わりの激しい状況の中でも、できるだけ現場の事実に即した情報を整理し、偏りのない形でシェアすることを心がけています。
完璧なデータを提示することは難しい領域ですが、「今、実際に採用の現場で何が起きているのか」をできるだけリアルにお伝えする──その姿勢だけは変えずに続けていきたいと思っています。
引き続き、状況のアップデートがあり次第、随時共有していきます。
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